お知らせ
人を大切にする経営~人が輝く組織をつくる100人の社長の物語:鴻上なつき社長 ~
2026年2月21日
「聴くこと」から始まる、強い物流会社
~ 和物流株式会社 鴻上なつき社長 ~
「私、ほんまに何もできへんのですよ」
そう笑いながら話される鴻上社長。しかしお話を伺うほどに見えてきたのは、
「人の力が自然に発揮される環境」をつくる経営でした。
和物流株式会社は、お父様が30年前に立ち上げた物流会社です。
現在は社員20名体制で、ドライバー17名を中心に、営業所長、配車担当、事務パートの
方が会社を支えています。車両は約20台。現場に目が行き届く規模感を保ちながら、日々の輸送を担っています。
🔳鴻上なつき社長の方針
◆ 34歳、突然のバトン。覚悟よりも先に「現実」が来た
鴻上社長が代表取締役に就任されたのは、和物流に入社して5年後、34歳のときでした。
お父様のご病気をきっかけに会社へ入ったものの、「自分が社長になるなんて思っていなかった」と振り返ります。社内の状況が揺れる出来事も重なり、急遽、代表として立つことになりました。
「覚悟があったかと言われたら…ないまま走り出した感じでした」
その言葉どおり、就任当初は試行錯誤の連続だったといいます。
◆「2024年問題」を見据え、長距離からの転換へ
当時、会社は超長距離輸送も抱えていました。しかし労働時間規制の強化、いわゆる「2024年問題」が迫る中、「このままでは続けられない」と判断。長距離からの転換を決断します。その結果、ドライバーの退職や車両の余剰、売上への不安が一気に押し寄せました。
「会社を潰すのは私かもしれない、って本気で思いました」
それでも、県内の仕事を支えてくれるドライバーたちは、何事もなかったかのように日々の仕事を回していました。その姿に背中を押され、鴻上さんは「3年で立て直す」と決め、車両の処分・入れ替えなど、現実的な再設計に取り組んでいかれました。
◆ 聴いて、任せて、最後は社長が決める
就任後しばらくは、社員とのギャップに悩み、営業にも必死に出た時期があったそうです。しかし、そこで気づいたのは、社長が営業に出ることよりも、社員の声を聴き、力を信じて任せ、現場が動ける状態をつくること。「聴いて、任せて、最後は社長が決める」という社長にしかできない役割に集中する方が重要だということでした。
そして決めた後は、きちんと説明し、結果まで見届ける。完璧にはできなくても、その積み重ねが信頼になると話されます。
🔳和物流の強み・風土
◆ 「素直さ」と「思いやり」を会社の共通言語に!
和物流の良さを尋ねると、鴻上社長は迷わずこうおっしゃいました。
「みんな、会社のことが大好きですね。スキルよりも、素直さと思いやりを大事にしたいって、社員も思ってくれているんです」
採用の場面でも、現場メンバーが「この人、うちに合う?」と率直に意見を伝えてくるそうです。それは、どんな仲間と働きたいかが共有されているということであり、社員の共通認識になっていること。これが和物流の大きな強みだと感じました。
◆ 有給・パパ育休が実績として語れる会社
採用が難しい今の時代、応募者は「有給は取れますか」「連休は取れますか」と聞いてきます。和物流では、有給休暇も比較的取りやすく、会社として初めてのパパ育休取得も実現しました。現場はそのカバーが大変ですが、社員同士の助け合いがあるから回る。
ここに、和物流の風土が表れています。
◆ 給料日に、全員へ「手書きの一言」
特に印象的だったのが、鴻上社長が1年前から続けている取り組みです。
毎月の給料日に、社内報とともに社員一人ひとりへ手書きメッセージを添えています。
ある社員が、そのメッセージを「仏壇に飾っている」と教えてくれたことがきっかけで、「これは絶対続けよう」と決めたそうです。冷蔵庫に貼っている人もいるとか。
「ほぼ一方通行のラブレターですけどね(笑)」
物流業のように勤務中の会話時間が取りづらい職場において、これは社長と社員をつなぐ強い接点になっています。
🔳 これからの展望
鴻上社長は今後、車両台数を35台規模へ伸ばしたいと考えています。背景にあるのは、一社依存のリスクを下げ、売上構成を安定させたいという思いです。
一方、最大の課題は採用です。
だからこそ、働きやすさを言葉だけでなく、「実績」として積み上げていきたいと語られました。
この件については、コンサルタントの立場から少し提案をさせていただきました。
突然社長を引き受け、苦しい局面を越えながら、少しずつ「聴く」「信じる」「任せる」を形にしてきた鴻上なつき社長。
その中心にあるのは、いつも『仲間を大切にする』という視点です。
物流の現場は日々事件の連続。それでも笑いながら語る姿から、社員への深い信頼と愛情が伝わってきました。
社長という立場は、時に孤独です。
それでも、迷いながら前を向き、社員を信じ続ける。
その姿勢が、組織を強くしていくのだと感じました。
人と組織の活性化をテーマにコンサルタントとして活動する中で、改めて実感するのは、
組織を変えるのは「制度」ではなく「対話」だということです。
「人が輝けば、組織は変わる」
人を信じ、任せ、聴き続ける。
その積み重ねこそが、組織を強くしていくのだと実感する時間となりました。


鴻上なつき社長
(和物流株式会社 代表取締役)