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人を大切にする経営~人が輝く組織をつくる100人の社長の物語:梅田加都さん~

2026年8月26日

暮らしを支える仕事を次世代へ

~ 株式会社 大隅電氣 梅田加都 取締役 ~

奈良県桜井市にある株式会社大隅電氣。
電気・水道・空調など、暮らしに欠かすことのできない設備工事をはじめ、
水回りのリフォームやインテリアデザインまで、住まいに関わる幅広い仕事を手掛けています。

灯りがつくこと。
水が出ること。
暑い日にも寒い日にも、快適に過ごせること。
私たちが当たり前のように享受している暮らしの裏側には、確かな技術を持った職人さんたちの仕事があります。

大隅電氣は、梅田さんのお祖父様が始め、お父様へ、そして梅田加都さんへと受け継がれてきた会社です。
お話を伺う中で見えてきたのは、ご自身の専門性を磨きながら、少しずつ経営者としての経験を積み重ね、
祖父や父から受け継いだ会社の未来と向き合ってこられた姿でした。

🔳父の仕事を誇らしく思った原風景

梅田さんのお話の中で、とても印象に残ったエピソードがあります。
それは、中学3年生のときのこと。
寒い冬の日、お母様が「これ、こないだパパが点けやってん」と指さした街路灯。
そこに町を照らす仕事をしている父の姿が見えて、とても誇らしかった。
その時、

「自分の心にも灯りが灯った。」

と話されました。

後に梅田さんが大隅電氣に入り、現場の仕事に「楽しい、おもしろい」とのめり込んでいったこと。
そして今、「父がやり残したことをするのが自分の使命」と語ること。
その原点には、中学3年生のときに感じた、お父様の仕事への誇らしさがあるのではないかと思いました。

🔳インテリアコーディネーターとしての経験

梅田さんは、インテリアコーディネーターとして長年経験を積み、活躍してこられました。
インテリアコーディネーターの仕事は、単に色や素材、家具を選ぶことではありません。
お客様がどのような暮らしを望んでいるのか。
これからどのように暮らしていきたいのか。
世の中や地域の動向も分析しながら、まだ言葉になっていない希望までくみ取り、
具体的な空間として形にしていく仕事です。

そのためには、インテリアに関する知識や感性だけでなく、
相手の話を聴く力
提案する力
そして多くの人と協力して一つのものをつくり上げる力
が必要です。

その経験を積んだ後、大隅電氣に入社し、インテリア事業部を立ち上げた梅田さん。
ところが、実際に土木の現場へ足を運ぶようになると、インテリアだけじゃない、
土木・建築現場での一連の作業工程のやりがいに気づき始めたそうです。

「現場はおもしろい。」

どんどん現場での施工管理にのめり込んでいったと笑顔で話されました。

大神神社参道の電気埋設事業や、奈良国立博物館仏像館のライトアップ事業。
そうした仕事について、
「地域にいつまでも残る仕事。だから楽しい」
と話す梅田さんの表情が、とても印象的でした。

インテリアの仕事で培った「人の暮らしを考える視点」と、
父や祖父から受け継いだ「地域を支える仕事」。
一見違うように見える二つの経験は、今の梅田さんの中で、
一つにつながっているのだと思います。

🔳同友会で学んだ、経営者としての視点

梅田さんが大隅電氣に入社して感じたのは、職人さんたちの「やらされ感」でした。
働き甲斐、やりがい、主体性が感じられない。

「どうすれば生き生きと働いてくれるのだろう。それはどこに行けば学べるのだろう。」
そう考えていたとき、紹介されて入会したのが奈良県中小企業家同友会でした。
特に印象に残っているのが、経営指針を成文化するセミナーで学んだリスク管理です。
会社の理念や将来像を描くことは大切です。
しかし、会社を継続していくためには、明るい未来だけではなく、起こり得るリスクにも向き合わなければなりません。

経営者に万が一のことが起きたら、会社はどうなるのか。
技術者が辞めたとき、事業を継続することができるのか。
さまざまな可能性を想定し、備えておく。
それも、社員とその家族、そしてお客様を守る経営者の責任です。

さらに梅田さんは、女性部会長という役割も引き受けました。
役割を引き受け、人と関わり、考え、言語化し、実践し、振り返る。
その一つひとつの経験が、会社の中だけでは得られない学びとなり、
梅田さんの中に「経営者としての土台」をつくっていきました。

経営は、ある日突然完成するものではありません。
さまざまな経験を積み重ねながら、少しずつ経営者になっていく。
梅田さんのお話から、そのことを改めて感じました。

🔳職人さんが、自分たちで考え始めた

そして梅田さんは、同友会で学んだことを会社で実践していきました。
今では職人さん同士が笑顔で対話し、それぞれの持ち味を生かしながら、主体的に助け合える組織となりました。
「やらされる仕事」から、「自分たちで考える仕事」へ。
人が変わったのではなく、もともと一人ひとりが持っていた力を発揮できる環境を作ることにより、職人さんが変わっていきました。

🔳祖父、父から受け継いだもの

大隅電氣は、お祖父様が礎を築き、お父様が広げ、育ててきた会社です。
お祖父様には、お祖父様の時代に果たしてきた役割がある。
お父様には、お父様だから築くことのできた信頼や技術がある。
そして梅田さんには、梅田さんだからこそ果たせる役割があります。
特に心に残ったのが、

「父がやり残したこと、手が回らなかったことをするのが、自分の使命」

と言い切っておられたことです。
それは、「社会性」と「人間性」。
特に「人間性」については、同友会で出会うさまざまな経営者の生き方や人間性から学ぼうと、常にアンテナを立てているそうです。

中学3年生のとき、父の仕事を誇らしく感じた少女が、さまざまな経験を重ね、
今、その父がやり残したものを自分の使命として引き受けようとしている。
お話を伺いながら、私はそこに、三代にわたって受け継がれてきたものの深さを感じました。

🔳暮らしと技術を未来へつなぐ

梅田さんがこれから実現したいのは、会社を大きくすることだけではありません。
AI時代に、エッセンシャルワーカーである職人さんが、自分の仕事に誇りを持つこと。
一人ひとりが自ら考え、力を発揮できる会社であり続けること。
そして、

「誰もが快適で幸せに働ける作業環境を整えていくことが、私の仕事」

と言い切っておられました。

梅田さんのお話を伺い、経営とは、先代が残してくれたものをそのまま守ることではなく、

「受け継いだ技術と想いに、自分の経験を重ね、働く人たちとともに未来へつないでいくこと」

なのだと感じました。

祖父から父へ。
父から梅田さんへ。
そして梅田さんから、職人さんや次の世代へ。
大隅電氣がつないでいるのは、電気や水道といったライフラインだけではありません。
人が安心して暮らせる日常と、仕事に誇りを持って生きる人たちの未来を、つないでいるのだと思います。

 

梅田加都さん
(株式会社大隅電氣 取締役)